スタートアップにとって採用活動は大きな問題であり、かなりの負担である。

急にそんなことを言われてもピンと来ない人も多いだろう。会社だし、人は雇わないと回らない。急成長していて利益も出ているのだから、人を雇ってもっと規模を大きくすればいい…採用について考えを巡らせる機会のない人はこのように考えるではないだろうか。

筆者は一人で事業をしている。雇われもせず、雇いもしていない。そんな立場からスタートアップの採用の現状を見ていきたいと思う。

スタートアップの話に入る前に、 雇う側の視点を想像してもらいやすいように、少し私個人の話を挟ませていただく。

英会話を教える個人事業主として、一人で事業を切り盛りしていると、時々言われることがある。それは「人雇えば?」という一言だ。一人でやっていこうと思いこの事業を始め、小さい規模のままやっているつもりでも、生徒への連絡・対応、レッスンスケジュールの管理、事務作業、教材作成など、レッスン実施以外にもやらなければならないことがたくさんあったり、方向性を決めるときに相談する相手もおらず、一人で決断することに限界を感じることもたまにあったからだ。

確かに、誰かを雇うことは何度も頭をよぎっていた。顧客対応の質の向上のため、仕事効率化のため、私にしかできない仕事に今より集中するため…理由としては十分だったと思う。

しかし、それと同時に懸念事項もすぐに思い浮かんだ。雇うとしたら、多少なりとも人のマネジメントに時間や労力を費やすことになる。秘書のような業務内容を得体の知れない個人事業主の元でやってくれる人などいるのか、それでも誰でも良いわけではなく、いつ辞めてもおかしくない学生アルバイトにはやはり任せられないと思った。雇うとしたらフルタイムで…そう思った瞬間に現実的ではないと感じてしまった。

結局、あまり良くないことだと思いながらも、スケジュール調整も事務作業も実際のレッスンも、すべて今でも一人でなんとかやってしまっている。

職を探す側だった頃は、採用というものが雇う側にこんなにもプレッシャーと負担のかかることだったなんて思いもよらなかった。そして最近、規模が小さく、まだ人々に認知されていないスタートアップも、個人事業主と似た問題を抱えていることを知ったのだ。


前置きが長くなったが、それではスタートアップが直面してる雇用における問題を実際に挙げていこう。

werehiring1. 採用はコストがかかる

リクルーターに人材発掘を頼むとなると費用は高額で、予算の少ないスタートアップには負担が大きい。仮にいい人材が上手く見つかった場合、大手企業のような研修制度が無いことは大前提だとしても、採用における諸々の初期費用はスタートアップの運営を確かに圧迫する。

2. 手が回らない

社内人事担当者は普通いないので、他の役職の人が兼任で人材探しをしないといけないのだが、スタートアップはなによりも、スピードが命!メインの役職でやらなきゃいけないことは山ほどあるため、つい採用は後回しにされてしまうのが現状である。

3. 求人サイトでは大手や有名な企業の求人情報に埋もれてしまう

日本には無数の求人情報が様々な求人サイトに掲載されており、日々更新されている。その中から求職者の注目を集めるのはどうしても有名な企業になってしまい、スタートアップの求人には目も通されないことも多い。自然と応募者数も少なく、いい人材に出会えるまでに労力も時間もかかる。

4. 採用のノウハウがない

ただでさえ課題の多いスタートアップの採用活動。その中で、採用の経験や知識もないため、的確な動きができずに競合相手に負けてしまうことが多い。魅力的な求人情報の書き方、一人当たりにどれだけのスキルや経験値を期待するべきか、どのくらいの報酬が妥当か、そういったことも経験も相談相手もいないため分からない。そして分からないということは、市場での競争で圧倒的に不利なのである。

5. 内定まで至っても、大手や有名企業との競合は激しい

スタートアップが必要としている人は即戦力。そのため応募者はとても優秀で高いスキルを持った人たちなので、スタートアップが喜んで内定を出したとしても、他に受けている企業に決められてしまうことも多い。大手からのオファーや内定を蹴ってでも来てもらうには、本当に魅力的な事業をしていることが必要であり、その伝え方にも長けていなければならない。

6. リスクが高い

それだけの投資をして雇った人が、少人数で運営しているチームと合わなかったり、思ったほどの利益を生み出さなかったりした場合のことを考えると、採用活動自体が、もともと予算の少ないスタートアップにとっては大きなリスクであると言えてしまう。


上記の内容は、スタートアップが採用を後回しにしてしまう理由としては十分すぎるだろう。日本人が重視する雇用の安定もなく、会社としての社会的信用もまだこれから得ようとしているところで、すぐにでも人材が必要な業務は具体的に決まっており、誰でも良いというわけではない。求職者に、その仕事のやりがいと、妥当な報酬と、その事業自体の魅力を見極めてもらえるかどうかというところに、実際に採用にまで至るかがかかっている。もともと候補者の少ないスタートアップの雇用市場で、スタートアップと求職者両方の具体的な要望を叶える難しさを想像していただけるだろうか。

そこまでしても新たな人材が必要なのは、スタートアップにとって、「人」が本当に全てであるからだ。

ある程度安定した会社は無意識にでも、実績や今までの人脈、ブランドイメージ、資金にかなりの部分を支えられている。でもスタートアップにはどれもない。「人」が実績も人脈も、ブランドイメージも作り上げるのだ。そこに資金が付いてくる。人を雇う余裕がない時ほど、実はそこにいる人と彼らの仕事が重要になってくるのが皮肉なところだ。

一番後回しにされる採用、本当は、一番優先されるべき採用

 

今回は、現状と問題に言及するに留まったが、次回はその問題に初めてメスを入れた、革新的なスタートアップを紹介したいと思う。

 

執筆:Suzuka Eco

 

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