専門知識でありながら、普段気づかないくらいわたしたちの日常に密接しているのがお天気に関する情報ではないだろうか。いや、むしろ毎日の生活に欠かせないはずなのに、気象予報士をはじめとする専門的な知識を持った人たちだけが扱える知識であり、一般市民には難しいものとして長年扱われてきたのがお天気に関する情報、つまり気象データだ。

 

今回は、そんな「近くて遠い」存在だった気象データを「分かりやすく、使いやすく、オープンに」提供しているスタートアップYuMake合同会社CEO佐藤拓也氏にインタビューさせていただいた。お忙しい中インタビューの予定時間を延長してまでご対応いただき、YuMakeのストーリーに限らず、佐藤氏の多岐に渡るご活動や今後のビジョンもお話しいただいた。

 

気象データの形式を変えて提供するという革命

YuMakeは、どんな業界でも使えるように気象データの形式を変え、APIを提供している。従来の気象データはGPVなど専門的知識のある人でないと「使いづらい」形式でしか提供されてこなかった。一方で、YuMakeの提供するデータはjson/jsonpという形式で汎用性が高いのが特徴だ。

 

「誰でも使える気象データ」が形となったAPI提供とFTP配信

商標利用可能にされているYuMakeの気象データAPIだが、情報の種類も細分化されていて用途によって使い分けやすい。天気予報だったら「今日明日天気予報API」や「時系列天気予報API」など、観測系情報だったら「推計気象分布API」や「日の出日の入りAPI」など、そして「防災情報」だったら「特別警報・警報・注意報API」や「土砂災害警戒情報API」などと、多岐に渡る。一般的なパッケージ型プランと違い、それぞれのAPIに細かく料金が設定されており、従量課金性だ。そのため、必要なものだけを選んで利用し、使った分だけ支払えばよいため無駄がない。資金の限られたスタートアップにも優しいという点が、佐藤氏の人柄の表れだと感じた。

 

また、YuMakeではFTP形式による気象データ配信も行っており、こちらは月額定額料金で提供されている。そして、もちろん商用利用が可能なデータとなっている。

YuMakeの追い求める「つかいやすさ」とは

佐藤氏のサービスに一貫して伺えるのは、広い意味での使いやすさである。気象データを多くの人が扱いやすい形式にするだけでなく、オープンに提供することで、より多くの人がその技術の恩恵を受ける機会を得られる。また、人々の生活をより良くするためのサービス提供者として活動している人たちにとっても強力な資源となる。

 

企業が技術を公開せず、自社の知的財産や特許を頑なに守ることで成長を期待できる時代は終わったというのが佐藤氏の考えだ。彼は、YuMakeの事業以外でもアイディアをシェアするために精力的に周りを巻き込み、広がりを作っていく活動を行っている。お話しを伺っていて、物腰の柔らかい穏やかな人柄からは想像できない無限の活力を感じた。佐藤氏の他の様々な活動については後編で詳しく触れたい。

 

「つかいやすさ」と隣り合わせの「オープンであるということ」

時代は確実に、有料無料に関わらず、オープンでシェアされるものが価値を見出される方向へと進んでいる。今日ではYouTuberやブロガーをはじめとする、素人や素人に近い人たちが影響力を増しているのもその一例である。彼らは、内容の質以上にアイディアをアクセシブル(≒わかりやすく、使いやすい)にすることで世の中に変化をもたらしている。この流れの中で、従来の技術開発の分野で特権的価値を与えてきた「独占」という考え方は、外からのアクセスを遮断し、自らを孤立させ好機から遠ざけるだけであろう。

 

YuMakeの佐藤氏は大学院で気象学を研究され、専門的な知識をお持ちだが、その知識を独占して自分と身近な人たちだけの地位や利益を確保するのではなく、知識をオープンにして多くの人に機会を提供することを軸に活動されている。様々な業界や形態のビジネスがそれぞれの持つアイディア・技術をオープンにし、お互いに掛け合わせることで生まれる新たな価値が、日本の躍進を推し進める。既得権益から分離されたスタートアップはその流れを先導していける力を持っているのだ。

 

素人が扱える気象データの可能性は防災の分野へ

気象データの話に戻ろう。気象データには多くの可能性が秘められていると佐藤氏は語る。特に直接影響してくるのは防災の分野だ。天候でも、土砂災害でも、地震情報でも、まだまだそれらの情報のエンドユーザーである一般市民までに届くには時間がかかっているのが現状だ。その一因として、限られた人しか気象情報を扱えないことがあり、その結果、多くの不安や問題を引き起こしている

 

例えば防災や災害対応となると、気象の専門家と各自治体の長とが連携する必要があり、その段階を踏むだけでも意思伝達の遅れは始まる。人々に避難を促したり、地域としての意思決定をしたりするべき人たちが、判断材料となる気象データを簡単に扱えるようになれば、対応ははるかに円滑に進むようになるのは、想像して頂けるだろう。それこそ一世を風靡した「君の名は。」の終盤のみつはのように、先を見通せる人が町長の事務所まで全速力で走って行き危機一髪を逃れるようなスリルは味わわなくて済む。映画だと美しいドラマだが、現実だとあと一歩遅ければ大惨事という事態だ。なるべく余裕をもって被害を防げるに越したことはない。

 

「オープンであること」が実現させる、多くのコラボレーション

YuMakeのサービスでありプロダクトである気象データは、オープンであることを利用されてこそ本来の価値を発揮する。だからこそ佐藤氏のもとには多くのコラボプロジェクトの話が舞い込んできており、それぞれ全く違う形で発展していっているのがとても面白い。

 

たとえば、YuMakeのWeather APIは一般社団法人イトナブに利用されることによって、釣り人にとって欠かせない天気、潮汐、そして日の出日の入り情報を釣りの釣果記録の管理と共にチェックできるアプリに姿を変えた。

また、ユニロボット株式会社の開発したAI搭載ロボットコンシェルジュ「ユニボ」は、会話を重ねることで持ち主の声のトーンや生活パターンから、持ち主が本当に必要なお情報を教えてくれるようになる。暑がりの人寒がりの人、晴れが好きな人曇りが好きな人、お天気だけとっても人の好みはそれぞれで、そんな家族一人ひとりの好みを学んで手助けしてくれるロボットだ。もちろん防災情報も教えてくれるので、自分の住む地域に必要な防災情報が、発信元である気象のエキスパートYuMakeからダイレクトに届くことになる。

災害時の命に関わる情報が、一媒体を介するごとに操作されたり隠されたりすることもなくなると考えると、可愛らしい見た目のロボットが日本中のお父さんたちに代わって情報における一家の大黒柱になるのも悪くないと思えるのではないだろうか。

 

上記の通り、いまだかつてないほどの盛り上がりを見せるAI界は、YuMakeの提供する気象データを放ってはおけない。すでに、株式会社ABEJA による、画像解析・Deep Learning 解析・大量データを高速処理させることが可能なABEJA Platformへの気象データプラットフォーム提供が始まっており、β版が9月より公開される予定である。それぞれの企業が持つ大量のデータや今後IoT機器などから得るセンシングデータを、気象データと掛け合わせて分析する際に利用できるプラットフォームだという。言葉を並べても、その可能性と広がりの規模を上手く伝えられなくてもどかしいが、9月のβ版の公開以降から、この掛け合わせが実現していくものたちを楽しみにしていてほしい。

 

(後編へつづく)

執筆:Suzuka Eco

 

 

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